民事再生について

民事再生について

民事再生とは、経営破綻の恐れのある企業の再建手続を定めた法律である民事再生法にしたがって、裁判所や監督委員の監督のもと、債務者自身が主体的に手続に関与し、企業の再建を図っていくというものです。
再生債務者の再建を迅速に図ることを目的とした手続であり、従来の同じ企業の再建目的で用いられてきた和議法よりも、手続のスピード化と要件の緩和が図られています。

民事再生の手続

裁判所へ再生手続開始申立がなされると、通常、債務の弁済禁止などを内容とする保全処分命令の発令とともに監督委員が選任されます。監督委員は、再生手続開始の要件の審査を行い、債権者説明会等の状況を踏まえて再生手続開始が相当か否かの意見書を裁判所に提出し、裁判所はこの意見書に基づいて再生手続の開始を決定します。
※再生手続開始の要件:(1) 破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき
(2) 事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき(民事再生法21条)

開始決定の後、債権届出・調査・確定など債権調査手続や財産目録・貸借対照表の作成など財産状況の調査を進めるとともに、今後の事業計画・弁済計画を骨子とした再生計画案を作成して裁判所に提出します。
監督委員がこの再生計画案についての意見書を提出し、債権者からの書面または債権者集会での再生計画についての決議で承認され、裁判所がこれを認可すれば、その再生計画が確定します。
※再生計画の可決要件:議決権を有する再生債権者について、議決権行使者の過半数の同意、かつ議決権総額の2分の1以上の多数で承認されます。

民事再生のスケジュールは、申立から1~2週間で開始決定が出て、申立後3ヶ月(場合によっては延長可能)に再生計画案の提出期限が設定され、おおよそ申立から5ヶ月~6ヶ月で再生計画の認可決定がなされるのが一般的です。

民事再生の特徴

1. 経営者の地位に変更がないこと
民事再生は、再生債務者自身が再建を進める手続であるから、手続が開始されても原則として経営陣は引き続き経営を続けることができます。ただし、東京地方裁判所の運用では、重要な行為を行うに際し監督委員の同意が必要となります。

2. 監督委員の承認が必要なこと
監督委員とは裁判所が選定した委員のことで、再生債務者の業務を監督し、重要事項の決定を行う場合の同意権を有しています。重要な行為を行うに際し監督員の同意を必要とすることで、手続に対する債権者の信頼を確保し、企業の再建を円滑に進めることが可能となります。

3. 担保権の行使ができること
担保権の実行により事業継続に必要な資産が換価されて再建が困難になるような場合に一定期間権利行使を中止することはありますが、担保権行使そのものを制限する規定はなく、担保権者は担保権の行使が可能です。

4. 従業員の雇用が維持されること
雇用関係については直ちに従業員の雇用関係が失われるわけではなく、未払賃金についても一般優先債権として支払いは可能です。ただし、再建過程では一層の合理化は不可避であり、リストラの一環として解雇となる可能性もあります。

5. 債権調査・確定制度があること
再生債権者が届出をした債権について、再生債務者及び他の債権者の認否・調査を経て確定する手続と、再生債権者が届出をしなくても再生債務者が自認する手続があり、これらの債権のみが再生債権として認められます。
認められなかった債権は失効するため、スポンサー企業は偶発債務や簿外債務の懸念を取り除き、リスクを回避することができます。

6. 破産への移行手続があること
決議に足る再生計画案作成の見込みがないときや再生計画案が認可されないとき、再生債務者が再生計画の履行を怠ったときなどには、裁判所が裁量で破産に移行できることになっています。

裁判所へ納める予納金

予納金基準額(東京地裁の場合)

負債総額予納金基準額
5,000万円未満200万円
5,000万円~1億円未満300万円
1億円~5億円未満400万円
5億円~10億円未満500万円
10億円~50億円未満600万円
50億円~100億円未満700万円
100億円~250億円未満900万円
250億円~500億円未満1,000万円
500億円~1,000億円未満1,200万円
1,000億円以上1,300万円