会社更生について

会社更生について

会社更生とは、窮地にある株式会社について利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図る手続である会社更生法にしたがって、裁判所の監督のもと、裁判所が選任した管財人(更生管財人)により企業の再建を図っていくというものです。
一般債権者のみならず担保権者や株主も対象として広く関係者の利害調整を行い再建を図る手続であり、企業の消滅が社会的影響を及ぼす、債権者数が多く債権額も大きい大規模会社を想定しています。

会社更生の手続

裁判所へ再生手続開始申立がなされると、債務の弁済禁止などを内容とする保全処分命令の発令とともに保全管理人が選任されます。保全管理人は、更生手続開始の原因の審査を行い、事業を継続しつつ財産の調査を行って更生の見込みを裁判所に提出し、裁判所が再生の見込みがあると認めれば更生手続の開始を決定します。
※更生手続開始の要件:(1) 破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき、(2) 弁済期にある債務を弁済すれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるとき(会社更生法17条)

開始決定の後、一人または数人の管財人が選任されます。管財人は、旧経営陣から経営権や財産の処分・管理権の移譲を受け、更生会社の事業を継続しつつ、債権届出・調査・確定など債権調査手続や財産目録・貸借対照表の作成など財産状況の調査を行い、今後の事業計画・弁済計画を骨子とした再生計画案を作成して裁判所に提出します。

この更生計画案について決議のための関係人集会で権利の種類ごとになされる決議で承認され、裁判所がこれを認可決定すれば、更生計画として発効します。
※更生計画の決議:更生債権者の組では議決権総額の2分の1超、更生担保権者の組では議決権総額の3分の2以上(計画案の内容によって異なります)の多数で承認されます。

会社更生のスケジュールは、申立をしてから、開始決定が出て更生計画案の提出がなされ更生計画の認可決定がなされるまで、おおよそ1年~2年かかるというのが一般的です。

会社更生の特徴

1. 経営者と株主は地位を失うこと
会社更生により、経営権や財産処分・管理権は、管財人に移り、さらに更生計画案において新経営者が選任されて、従来の経営者は地位を失うことになります。また、更生計画案において定められた100%減増資が行われる結果、従来の株主は地位を失うことになります。

2. 否認権制度があること
管財人は、公正な手続を確保するため、更生会社が更生手続開始前になした債権者に損害を与える一定の行為について、その法的効力を否定し、減少した財産を回復することができます。

3. 担保権の行使ができなくなること
更生会社の再生に担保権を消滅させることが必要と認められる場合、担保権者は、担保権評価相当額の返済を受ける代わりに担保権の行使ができなくなります。

4. 従業員の雇用が維持されること
雇用関係については直ちに従業員の雇用関係が失われるわけではなく、未払賃金についても一般優先債権として支払いは可能です。ただし、再建過程では一層の合理化は不可避であり、リストラの一環として解雇となる可能性もあります。

5. 債権調査・確定制度があること
債権者が届出をした債権について、管財人が認めた債権のみが更生債権・更生担保権として認められます。

民事再生との違い

民事再生は、再生債務者の再建を迅速に図ることを目的としており、原則として資本構成や会社組織の変更を含めていないし、担保権者の担保権行使に原則として制限がないのに対して、会社更生は、広く関係者の権利調整を行い抜本的な再建を図ることを目的としているため、更生手続の中で経営者や株主の交代をもたらしますし、担保権者の担保権行使にも制限があります。
また、更生手続は手続が複雑かつ厳格であり、民事再生よりも手続に時間を要します。

会社更生(DIP型)

DIP(Debtor in Possession)型会社更生とは、破綻企業の経営陣が退陣せず、更生計画などに関与する会社更生手続のことをいいます。
従来型の会社更生法に基づく更生手続は、従来の経営者や株主は地位を失い、また更生手続は時間を要するため、会社更生法の適用が減少し、民事再生法の適用が増加したことに伴い、DIP型会社更生手続が導入されました。

DIP型会社更生の特徴は、

1. 従来の経営者がそのまま管財人に就任して会社再建にあたることができる点と、
2. 従来の経営者が続投することにより手続が効率的に進み、迅速に再建ができる点

にあり、担保権について更生計画の定めるところによって権利が制限される点については従来型の会社更生法と同様であり、会社更生法の利便性を従来の経営陣を残しながら利用できることになります。

一方で、DIP型会社更生は、管財人である経営者と債権者との利益相反が起きやすいというデメリットもあるため、DIP型会社更生手続を利用するにあたっては、
(1) 主要債権者の同意があること、
(2) 現経営陣に不法行為等の違法な経営責任がないこと、
(3) スポンサーとなるべき者がいる場合にはその了承があること、
(4) 現経営陣の経営関与によって会社更生手続の適正な遂行が損なわれるような事情が認められないこと、

といった要件を満たす必要があります。